オーディション

昨晩、あまり寝付きがよくなかったので、諦めて読みかけの本を読破。コレ↓

オーディション (幻冬舎文庫)

オーディション (幻冬舎文庫)

ぼちぼち長いのでたたんでおきます。


恥ずかしながら、村上龍の本を読んだことがなかったので(忘れている可能性もある)、借りた友人には「エロいよ」と言われたままドキドキしながら読んでいたんですが・・思った以上にエロくなく。というのも、(多分)性描写は過激なんでしょう。ただ、読み手が想像できなかったら意味ない。それだけ。あれー、俺のそういう知識は中学生かい。(あえて否定はしない。)というわけで、一番のエロ所は肩透かしで終わってしまいました。ごめんよ。
全体的な感想として、この作品を読んだ上で一番狂気に思わなくてはいけないのは、狂ったように本物の愛を求める麻美なんでしょうが、ワタシは青山の息子・重彦の方にゾクリと背中を這うような恐怖を感じた。足首を切られた父親、無機質で血だらけの美しい女、それらを目の当たりにして動揺することもない態度の重彦は、表面に現れないことこそ母の死以上の恐怖なんて感じなくなっているのか。それともただの性格か・・。(だとしたら訂正する所存です。)
精神科医の先生によるあとがき内容としては、幼少期に植え込まれたトラウマは癒えることはないとか。トラウマをトラウマ以上に感じることも、感じないことも、その人個人の捉え方次第ではあるけれども、狂気の女・麻美を踏み台に重彦の心の傷の大きさを自分なりに解釈する結果となりました。
ここからはワタシの勝手な意見ですが、トラウマは、それを押さえ込んで見えない大きなストレスとなり、その人個人の人格を壊すような恐ろしいもの。また、感じ方も十人十色というように、どれがどのように、どれほどの大きさで傷を残すのかは一様には計れない。たとえば、幼少期から大人のような合理的な考えを持った子供が、周りの子供じみた子供と同じ扱いをされることも一種のトラウマであり、それは今後、彼・もしくは彼女が成長する過程でのトラウマになりうる。年相応の考え方をするという周囲の人間の甘さ、自立しなければいけないという信念、相手を傷つけまいという柔軟な対応、、、幼少期というのは、すべてが柔らかいもの。その時に吸収してしまった"違和感"は細胞の核にまで到達し、それが大きくその他を育てる。いいトラウマという表現は間違っていますが、たとえば、心にとって良い経験は人を大きく育てる。これら二つのトラウマは、なんとも極端で非情であると感じ、また、窮屈であるなぁと思わずにはいわれない。