三人


君には、僕の声が聞こえてますか。
君には、僕の姿が見えてますか。
今の僕には、もう君の声が聞こえていなくて、姿すら薄れてしまっていて
ひろい場所に、何か冷たい水があるだけのよう。
暖かい湯が冷たい水をぬるま湯に変えてくれるわけじゃなくて
水蒸気のように潤いをくれるわけでもなくて
必要なはずの水なのになぜか要る気がしなくて、
ろくに何もせず、そのまま何もいらない物になるまで
きっと見ているだけで。見なくなって。


君には、僕の声が聞こえてましたか。
君には、僕の姿が見えてましたか。
僕は、通り過ぎるものの一つで、なにもないものの一つで
毎回新しいものの一つだった。
ゆっくりとした時間は楽しいことだけで物足りなくて
何もないことがさびしくて
うつくしくない透明なものばかりが重なって、今でも一番下がよく見える。
きみがいる反対からは、くすんで見える。


君には、僕の声が聞こえてませんか。
君には、僕の姿が見えてませんか。
見たいものが見えにくくて、見えなくなって。
僕にも、君のが聞こえなかった。
僕にも、君のが見えなかった。